盛岡バスセンター 人と地域の魅力をつなぐ Local Hub 

盛岡バスセンター 
人と地域の魅力をつなぐ Local Hub

HOTEL MAZARIUM

Local Hub Story vol1

Local Hub Story vol1

盛岡バスセンターの今、昔、そしてこれからを
様々な視点で読み解くルポルタージュ

vol.1 建築編
「ローカルハブって何だろう」

2022年秋のオープンに向け、着々と工事が進む「盛岡バスセンター」。徐々に姿を見せる建物の様子は、道ゆく人の期待を集めている。建築設計を担当する株式会社ワークヴィジョンズ代表の西村浩さんに、提案のコンセプトや未来へのビジョンを伺った。

西村 浩さん(建築家/クリエイティブディレクター)

西村 浩さん
(建築家/クリエイティブディレクター)

1967年佐賀市生まれ。東京大学工学部土木工学科卒業、同大学院工学系研究科修士課程修了後、1999年ワークヴィジョンズ一級建築士事務所(東京都品川区)を設立。土木出身ながら建築の世界で独立し、現在は、建築・リノベーション・土木分野のデザインに加えて、全国各地の都市再生戦略の立案にも取り組む。2014年には佐賀市呉服元町に同社佐賀オフィス兼シェアオフィス「COTOCO215」を構え、2020年にはベーグル専門店「MOMs’ Bagel」の事業主となり、マイクロデベロッパーとしても佐賀のまちづくりにも取り組んでいる。
北海道岩見沢市の「岩見沢複合駅舎」では、日本建築学会賞(作品)、2009年度グッドデザイン賞・大賞の他、BCS賞、ブルネル賞、アルカシア建築賞、公共建築賞等受賞。近年では、2021年度グッドデザイン賞・金賞(神水公衆浴場)を含む、グッドデザイン賞5作品受賞(神水公衆浴場、佐賀市呉服元町ストリートマーケット、鹿児島世界文化遺産オリエンテーションセンター、福島県石川町文教複合施設・モトガッコ、糸魚川市・キターレ)、日本空間デザイン賞2021の最高賞KUKAN OF THE YEAR(神水公衆浴場)、2021年度都市景観大賞特別賞(糸魚川駅北地区)、2021年度土地利用モデル大賞/国土交通大臣賞(佐賀市呉服元町ストリートマーケット)、など、分野を超えて数多くの受賞歴がある。

新しいまちの顔が生まれる。

「交差点に面したエントランスの扉を開けると、左手に開放感ある吹き抜けが広がります。自然の森をイメージした造りになっていて、木々に差し込むような柔らかな光が、皆さんを迎えてくれると思います」。
建設工事まっただ中の盛岡バスセンターを訪ねると、西村浩さんは完成後の姿をそんなふうに説明してくれた。案内の先に目を向けると、盛岡市産カラマツの集成材を使った窓枠がランダムに配置されている。2階までガラス張りの吹き抜けを支える四角い柱は、安定感のある太い木材を使いながらも、スクエア部分を見せることですっきりとした印象に。設計チームの細やかな工夫が生かされていた。

建設写真

一階マルシェから二階への階段部分。盛岡市産材を使用した温かみのある空間。

建設写真

バスプールには屋根があり、雨や雪でも安心な設計とした。

新しいバスセンターは、地上3階建て。各フロアの商業施設はいずれも、盛岡を中心にした県内事業者が中心となる。めざすのは、通勤や通学に利用する地域の人、子育て中のお母さんやシニア層など近隣の住民、国内外からの旅行者等、幅広い利用者が日常的に立ち寄れるような場だ。1階には鮮魚や惣菜、パンなど買い物を楽しめるマルシェ、待合室に隣接したそば屋やカレーショップがオープンする。2階には気軽に飲食ができるフードホールがあり、地元のビールやワイン、日本酒等も楽しめる。別棟には子育て支援施設を併設し、子育て世代等をサポートしていく。そして、3階にはホテルと温浴施設、コインランドリー、屋上広場を備え、地域内外の文化交流機会創出にも取り組む予定だ。

建設写真

3階の宿泊施設には広々としたラウンジが併設される。

建設写真

ラウンジから屋上広場を望む。アウトドアイベントなども計画予定。

建設写真

ワークヴィジョンズのスタッフで設計監理担当の林さん(右)。現場に常駐しながら河南地区ライフを楽しんでいるという。

建設写真

客室にはサウナ付きの部屋やヘラルボニーのアートが飾られる部屋も。

建築は、地域との関係性をつくるプロセス。

西村さんが考えるのは、人と地域をつなぐ結節点「ローカルハブ」となるバスセンター。しかし、それは建築物の機能を指すだけではないようだ。
「人と地域をつなぐというのは、ハードの問題だけではなく、地域の人とどういう関係を育みながら、この施設をつくっていくか、というプロセスが大事だと思っています。建設工事に取りかかるずいぶん前から、地元商店街や住民の皆さんが跡地でイベントを開催したり、上棟式では餅まきをしてみんなが楽しんだり、オープンした時点で地域全体が盛りあがっているような施設のあり方が理想ですよね」。

西村さん
建設写真

106号線の角地外観。旧バスセンターの面影は残しつつ、新たなスタートを切る。

2016年、長く愛された盛岡バスセンターは老朽化のため解体された。その後、近隣商店街や街づくり団体などが「盛岡バスセンターおよび周辺地区活性化協議会」を立ち上げ、バスセンター跡地を「SIDE-B」と名付けて、多数のイベントを開催。まちの賑わいや人の流れを維持すべく活動を続けた。そうした活動の連鎖は確かなまちの価値になっていくはずと、西村さんは話す。
「このバスセンターが新しい建物になるというだけでなく、周辺地域の皆さんが応援してくれたり、何かバスセンターグッズを持って商店街で買い物をするとおまけがもらえるみたいな楽しみもあったり。地域の人がこのバスセンターを利用する皆さんと一緒に新しい何かを始めていく、そんな施設になったらいいですね」。

バスというメディアを、どう編集するか。

「バスは、地域を編集する一つのメディア」と、西村さんは言う。だからこそ、単にインフラ整備の手段ではなく、路線それぞれの個性が大事である、と。

西村さん

バスセンター建築模型からは、未来の姿が想像できる。

「バスという道具で地域をつなぎ、そこにストーリーがあると乗ってみたい気持ちになるし、締めくくりはバスセンターでお風呂に入ろうとかね。盛岡のまちなか、郊外、中山間地域、仙台や首都圏までつながるその先には空港があり海外へ続く。ものすごく広いエリアを網羅していく最初の結節点が、このバスセンターなんです」。
建築設計にあたって、暮らしの一部として使われる空間をどうつくるかを大事に考えたと話す、西村さん。そのミッションに基づくプランをすすめる中、3階のホテルデザインに株式会社ヘラルボニーが加わった。さらに、世界的ジャズピアニスト・穐吉敏子さんのミュージアムも設置されるなど、想定以上のコンテンツが加わったことで、場の個性はより深まった。
「今回のバスセンター誕生を機に、地域の皆さんが当事者となって、誇りある価値を一緒につくっている感覚です。バスで帰省した県外の若者たちも、県産の美味しいものや街のカルチャーを楽しむことで改めて地元の良さに気づき、メディアの当事者になっていく。そんな流れができたら、いい施設になるんじゃないかな、と思っています」。

建設写真